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事例紹介

公共建築など

いくの喜楽苑(1991)

社会福祉法人「尼崎老人福祉会:現、喜楽苑」が運営する特別養護老人ホームです。入居者本位の施設づくりを目指す尼崎老人福祉会の2番目の施設として、兵庫県朝来郡生野町に建設されました。人権・プライバシーの保護を第一の目標として掲げ、当時は国の基準では禁じられていた個室を、標準の4人部屋を建具で分割する手法で実現しました。また住区をデイルームを中心に小規模に3分割し、入居者が顔見知りの人達と安定的に暮らせる平面計画になっています。

左の写真は、玄関へのアプローチです。地域性を考慮し、和風のデザインとなっています。深い庇の上に屹立する塔状部分の花形の飾りは、生野町にゆかりのさつきの花びらのデザインです。

まわりを小高い山に囲まれた田園地帯に立地しています。敷地の広さを利用して、主たる居住部分は平屋になっています。2階建ての部分は、デイサービスセンターなど近隣の短期利用者のための施設になっています。

3つあるデイルーム(共同の居間)の風景です。職員の助けを借りながら、入居者の皆さんは自由に暮らしています。高断熱高気密の仕様であるため、冬は暖かく、十分な自然通風を確保しているためその他の季節は適切に外気を取り入れて快適に暮らすことができます。

4人部屋の居住室を、真ん中に廊下を入れ建具で仕切ってて、4つの個室のクラスターにしています、音的な完全な独立はできませんが、視覚的なプライバシーの確保や、ご自分のテリトリーの確保が可能になっています。

一般の特別養護老人ホームでは、私物の持ち込みを厳しく禁じているところが少なくありません。しかしここでは、床面積や空間の容積が許す限り、何を持ち込んでも自由です。入居者は、思い出の品と一緒に、心安らかに暮らすことができます。

4人部屋の居住室の入口の建具には番地名が記されています。小さいながらそれぞれの部屋が独立した住まいであることを認識してもらおうと、この様な設えを行いました。単なる施設ではなく、住まいの集合体にしたいとの法人の意思の表れですね。

建物の中には、3箇所の大きな中庭が設けられたいます。各居住室の十分な採光や通風のためのものです。外壁と中庭の壁面積が大きいため、4人部屋を分割した全個室にも光や通風が行き渡っています。

低層の建物に囲まれた気持ちの良いこの中庭は、様々な催しにも用いられています。

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